平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。東京共同会計事務所のベトナムデスクです。
ベトナム進出に係る様々な税務・法務情報等を提供したいと考え、本メルマガを送らせて頂いております。
今回のテーマは、次の通りです。
なお、各コラムは執筆者により「寄稿」されたものであり、その文責は執筆されたコラムに限定されています。
東京共同会計事務所
ベトナム政府は、2024年11月26日に付加価値税(※)法No.48/2024/QH15(「新法No.48」)を交付し、2025年7月1日以降に適用されます。当該2025年7月1日に適用される新法No.48では、全体的には現行の法律規定を維持しながらも、他の税法、経済変化等を考慮したうえで、複数の修正・補足が行われました。今回は、それら修正・補足の内で注目されているいくつかの点について触れていきたいと思います。
※ベトナムで付加価値税(以下「VAT」)が初めて適用されたのは1999年1月1日です。その以前はTurnover Taxという税が売り上げの都度に課される仕組みがありましたが、重複課税となるためこれを廃止しVATが導入されました。ベトナムのVAT(日本の「消費税」と概ね同様の税金)は、ベトナム国内で提供される商品やサービス、輸入品に対して課されます。
(ⅰ)VATの納税者
VATの納税者は、課税適用対象の物品の製造・販売およびサービスを提供するベトナムの国内事業者、VAT課税対象物品の輸入者等です。新法No.48では、ベトナム国内に恒久的施設を持たず電子商取引やデジタルプラットフォーム経由で商品などを提供する外国事業者が納税者の概念に追加され、原則として当該外国事業者に代わりデジタルプラットフォームを運営する事業者等がVATを控除・納付するという規定も導入されました。
(ⅱ)VATの計算方法
VATの計算方法は、控除方法と直接方法という二つの方法があり、控除方法を利用する場合には、日本と同じく、販売する際に購入者から受け取る税額(「アウトプットVAT」)から、物品およびサービス購入をする際に支払う税額(「インプットVAT」)を控除して計算することとなります。インプットVATがアウトプットVATを上回る場合には、条件により、翌期に繰り越すか、還付を受けるかになります。
(ⅲ)税率
税率は3種類あり、輸出されベトナム国外等で消費される物品・サービス提供は0%、一般的な生活必要品や特定のサービスは5%、および標準税率は10%となります。今回の新法No.48ではいくつかの品目について税率の変更がありました。例えば、これまで非課税であった品目(肥料等)が5%で課税されることとなり、また5%であった品目(砂糖、研究・科学試験に専用的に使用される設備等)が10%で課税されるようになる変更もありました。税率0%である輸出物品と輸出サービスについてより明確な規定が設けられ、さらにその他の輸出物品・輸出サービス(例えば、外国企業に提供し、海外で消費する証拠がある電子商品等が0%で適用対象)という項目が補足されました。
なお、2024年12月31日に、政府は政令No.180/2024/ND-CPを発行し、一部の物品・サービスを対象については、引き続きの暫定措置として、標準税率10%から8%の軽減税率が2025年6月30日まで適用されることとなっています。
(ⅳ)課税価格
輸入品に対する課税価格は、輸出入税法の規定と一致させるため「国境における輸入価格」という現行規定から、「輸出入税法に定めた課税価格(いわゆる輸入関税を課す価格)」という規定に変更されました。
(ⅴ)インプットVATの控除条件
現行の税制では、インプットVATの控除条件は、 ①購入時に発効された適格なVATインボイス又は輸入時のVATの支払い領収書(納税証明書)、又は②銀行決済等の非現金支払証憑(VAT込みの支払金額が20ミリオンドン未満の場合を除く)があること等でした。新法No.48では、②について政府が定める特別なケースを除き、VAT込みの支払金額が20ミリオンドン未満の場合は不要という規定が廃止され、非現金支払証憑が必要という規定に変更されました。そして、輸出物品・サービスの場合には、現在の規定では、インプットVAT控除のためには、これらの①と②の条件のほかに外国企業と締結する販売契約等が必要ですが、新法No.48では輸出物品に対する控除・還付の濫用を防止するために、さらにpacking list, bill of lading等の提出も必要となりました。
(ⅵ)付加価値税の還付
現行の税制では、付加価値税の還付が可能なケースは限定的でした。例えば、VAT控除方式を採用している企業の新規プロジェクトが操業前の段階にあり、インプットVATの累計額(既存のプロジェクトのアウトプットVATから控除しきれない額)が3億ドン以上である場合の一定の企業、又は控除しきれないインプットVAT額が3億ドン以上である輸出事業を行う企業などでした。ただし、輸出企業の還付可能な額はその輸出売上の10%までとされており、その他はODA等に関しても詳細な規定がありました。今回の新法No.48の還付条項では、5%の課税対象物品・サービスのみを取り扱い、且つ12か月(又は4四半期)連続で3億ドン以上の控除しきれないインプットVAT額がある企業が還付対象として規定され、さらに還付条件、納税者および税務当局の責任についての規定が追加されました。
また、新法No.48には、運用上の便宜のために、より明確にする規定として「VAT控除・還付に関する禁止行為」という条項等が追加されました。
新法No.48は、一部の規定を除き2025年7月1日に適用されます。また、付加価値税法No.13/2008/QH12、当該税法No.13のいくつかの条項を補足・修正した税法であるNo.31/2013/QH13、税法No.71/2014/QH13、税法No.106/2016/QH13は、同日に廃止されます。しかしながら、実務上、VATに関しては通達等が頻繁に公布されますので、常に法律を確認することが重要となります。今回の新法No.48では、複数の法律で修正・補足されてきた規定が纏められ、より明確となりましたが、通常、法律の発効後に政令・通達により、さらに具体的なガイダンスが提供されますので、税務コンプライアンス等の観点から、引き続き交付される政令等も確認することが重要となります。
弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所(https://uryuitoga.com/)
インターネットサービス及びオンライン情報の管理、提供、利用に関する議定(Decree No. 147/2024/ND-CP、以下「本件議定」といいます。)が、2024年11月9日に制定され、同年12月25日から施行され(本議定第83条第1項)、本件議定の施行に伴い、Decree No. 72/2013/ND-CP((Decree No. 27/2018/ND-CP、Decree No. 150/2018/ND-CP第2条により修正補充)、以下「旧議定」といいます。)は廃止されました(本件議定第83条第2項)。
本件議定は、ベトナム国内の組織及び個人のみならず、ベトナムのインターネットサービス及びオンライン情報の管理、提供、利用に直接参加し又は関連する外国の組織及び個人も適用対象としているため(本件議定第2条)、ベトナム企業のみならず、日本企業のような外国企業にも適用される可能性があります。また、本件議定は旧議定に比して厳格な規定を定めており、事業に大きな影響を及ぼす可能性も否定できません。そこで、本稿において紙面の許す限り、特に重要と思われる点につき、本件議定の概要を取り上げます。
(1)越境での情報提供に関する規定の厳格化
旧議定は、外国における組織・個人が、ベトナムの利用者がサービスにアクセス又は利用する公的情報を提供するために、電子情報ページ、ソーシャルネットワーク、オンラインアプリケーション、検索サービス、及びインターネット上のその他同等の類型を使用することを、「越境での公的情報提供」と定義し、越境での公的情報提供を行う外国の組織・個人の責任を規定する等していました(旧議定第22条、Circular No. 38/2016/TT-BTTTT第2条第1項、第3条等)。
これに対し、本件議定は、外国における組織・個人が、ベトナムのサービス利用者をサービスにアクセスさせ又は利用させるために、インターネット上で情報の提供及び情報コンテンツサービスを提供することを「越境での情報提供」として定義し直しました(本件議定第3条第3号)。
そして、ベトナムに越境で情報提供する外国の組織・企業・個人は、本件議定の規定及びベトナムの関連する法令の規定を遵守しなければならないとし(本件議定第23条第1項)、更に、ベトナムに越境で情報提供する外国の組織・企業・個人が、(i)ベトナムでデータストレージスペースのレンタルサービスを使用した、又は(ii)1か月間にベトナムからの定期的な訪問者の総数(6か月連続の期間の平均統計データ)が10万以上である場合、上記の一般的な責任を加えて、概要以下の責任を負うとされ、特に、ソーシャルネットワークサービスに関する規制が厳格化されている点には留意が必要と思われます(本件議定第23条第3項各号等)。
(A)ベトナムでデータストレージスペースのレンタルサービスを使用した時点、又は上記訪問者数を満たした時点から60日以内に、ベトナムの国家機関に対し連絡先情報を通知すること(同項第a号)。 (B)知的財産に関する規制に基づいてベトナムの報道機関から引用された情報を提供する場合、当該ベトナムの報道機関とコンテンツに関する協力合意を実施すること。協力合意には、合意期間、使用される内容及び範囲、各当事者の責任、利益の支払方法又は形態の基本情報が含まれている必要があり、協力合意に達することができない場合には、越境で情報提供する外国の組織・企業・個人は、ベトナムの報道機関からの引用情報を使用又は表示できないこと(同項第d号)。 (C)ソーシャルネットワークのアカウント登録時に、ベトナムからのサービス利用者の情報(氏名、生年月日、ベトナムの携帯電話番号(又は個人識別番号))を保存すること。ソーシャルネットワークサービスの利用者が子供(16歳未満)である場合、子供の父母又は民事法令に従った監護者は、当該父母又は監護者の情報でアカウント登録をし、児童のソーシャルネットワーク上の情報のアクセス、掲載及び共有内容を監視、管理する責任を負うこと。書面での要求がある場合、情報通信省、公安省、権限を有する機関に対しベトナムでのサービスの利用者の情報を提供すること。サービスの利用者が、ベトナムに越境で情報提供する外国の組織・企業・個人に対し、広告、宣伝又はその他の組織・個人に提供する目的で自身の情報を使用することを許可するか否かを決定する権利を有することを確保すること。法令の規定に従った保存期間終了後にサービスの利用者の情報の削除を実施すること(同項第dd号) (D)ベトナムの電話番号で、ソーシャルネットワークサービスの利用者のアカウントの認証を実施すること。利用者がベトナムの電話番号を有さないことを確認した場合にのみ、ソーシャルネットワークサービスを提供する外国組織・企業・組織は、電子識別及び認証に関する法令の規定に従って個人識別番号でアカウントの認証を実施すること。ソーシャルネットワークサービスの利用者がライブストリーミング機能を商業目的で利用する場合、電子識別及び認証に関する法令の規定に従って個人識別番号でアカウントの認証を実施すること。認証済みのアカウントのみが、ソーシャルネットワーク上での、情報の投稿(記事執筆、コメント、ライブストリーミング)及び情報の共有ができるようにすること(同項第e号) ※ソーシャルネットワークサービスを提供する国内外の組織、企業又は個人は、本件議定の施行日から90日間に、アカウントを認証するとされています(本件議定第82条第10項)。 (E)アプリケーションストアを提供する外国の組織・企業・個人は、情報通信省、公安省、権限を有する機関の要求がある場合、法令に違反するアプリケーションの削除を実施しなければならないこと。ベトナムの支払いに関する法令の規定を遵守すること。ベトナムのプレイヤーにオンラインゲームサービスを提供する企業に対し、アプリケーションストアにゲームを掲載する際に、オンラインG1ゲームの発行決定書又はオンラインG2、G3、G4ゲームの発行通知確認書を提供するよう要求すること。オンラインゲームサービスを提供する企業は、アプリケーションストアに提供する情報と文書の誠実性に責任を負わなければならないこと(同項第k号)。 |
(2)オンラインゲームサービスに関する規定の厳格化
オンラインゲームサービスとは、プレイヤーがオンラインゲームをプレイするためのネットワークへのアクセス可能性を提供することと定義されており(本件議定第3条第34号)、これは旧議定の定義から変更はありません(旧議定第第3条第9号)。
まず、ベトナムのユーザーにオンラインゲームサービスを提供する外国の組織・個人は、ベトナムでオンラインゲームサービスを提供する企業を設立する必要があるとされており(本件議定第23条第1項、第37条第4項)、この点も旧議定から変更はありません(旧議定第31条第4項)。但し、本件議定では、越境でのサービスの提供の場合についてもベトナムでオンラインゲームサービスを提供する企業を設立する必要がある旨明記されている点には留意が必要と思われます。
また、ベトナム法令上、オンラインゲームは、G1(企業のゲームサーバーシステムを通じて同時に多数のプレイヤー間での相互作用を有するゲーム)、G2(プレイヤーと企業のゲームサーバーシステム間の相互作用のみを有するゲーム)、G3(多数のプレイヤー間での相互作用を有するが、プレイヤーと企業のゲームサーバーシステム間の相互作用がないゲーム)、G4(オンライン経由でダウンロードされ、プレイヤー間及びプレイヤーと企業のゲームサーバーシステム間の相互作用がないゲーム)の4つに分類されています(本件議定第37条第1項第a号ないし第d号)。
そして、本件議定では、①G1のオンラインゲームを提供するには、(a)オンラインG1ゲームサービス提供許可証及び(b)オンラインG1ゲーム発行決定書が、②G2、G3、G4のオンラインゲームを提供するには、(a)オンラインG2、G3、G4ゲームサービス提供証明書及び(b)オンラインG2、G3、G4ゲームサービス発行通知確認書が必要とされています(本件議定第37条第2項、第3項)。
この基本的な枠組み自体は旧議定と本件議定とである程度共通していますが(旧議定第31条第2項、第3項)、本議定は、旧議定に比して以下の点で厳格化されています。
(a) 提供許可証(上記①(a)、②(a))の発給条件
まず、提供許可証の発給条件に関し、旧議定では、G1のオンラインゲームか、G2、G3、G4のオンラインゲームかで大きな違いがありましたが(旧議定第32条第1項、第33条)、本件議定では、G1のオンラインゲームとG2、G3、G4のオンラインゲームの提供証明書の発給条件は、若干の差異はあるものの、ほぼ同じ内容とされ(本件議定第39条第1項、第48条第1項)、旧議定に比して、G2、G3、G4のオンラインゲームの提供証明書の発給条件は大幅に厳格化されています。
また、具体的な発給条件に関しても、本件議定では、G1のオンラインゲームとG2、G3、G4のオンラインゲームの何れにも適用される発給条件の一環として、旧議定にはなかった以下の条件を追加しており、発給条件が厳格化されています。
- ベトナムの携帯電話番号でプレイヤーのアカウントの認証を実施し、認証されたアカウントのみがゲームに参加できることを確保する技術設備システムを備えること(本件議定第39条第1項第dd号、第48条第1項第dd号) - 18歳未満のプレイヤーの1日のプレイ時間(00:00から24:00まで)が各ゲームで60分を超えず、企業が提供する18歳未満のプレイヤー用の全てのゲームで1日180分を超えないことを確保する技術設備システムを備えること(本件議定第39条第1項第e号、第48条第1項第e号) - プレイヤーのアカウント名、サービス利用時間並びに仮想アイテム、報酬ポイント及び仮想単位の所有権に関する情報を含むプレイヤーのサービス利用過程に関する情報の完全な保存、継続的かつ正確な更新を確保するための、プレイヤーのアカウントの内容及び情報を管理する措置を有すること(本件議定第39条第1項第i号、第48条第1項第i号) |
(b) オンラインG2、G3、G4ゲームサービス発行通知確認書(上記②(b))の発給条件
旧議定では、所定の書式(旧議定付録I書式No.21)に従ったオンラインゲームサービス提供通知書を当局に提出し、当局からオンラインゲームサービス提供通知確認書の発給を受けることとなっていたところ(旧議定第33dd条第1項、第2項)、このオンラインゲームサービス提供通知確認書の発給条件に関する規定はなかったため、書式上記載が必要な事項(企業名、責任者の氏名、オンラインゲームの名称・概要等)を記載して提出すれば、オンラインゲームサービス提供通知確認書の発給を受けられることになっていました。
これに対し、本件議定では、所定の書式(本件議定付録I書式No.43)に従ったオンラインG2、G3、G4ゲームサービス発行通知申告書を当局に提出するのみならず、更に一定の発給条件を充足した場合に限って、オンラインG2、G3、G4ゲームサービス発行通知確認書の発給を受けられることとなっており(本件議定第52条第1項、第2項)、オンラインG2、G3、G4ゲームサービス発行通知確認書の発給条件が厳格化されたといえます。
(c) そのほか
オンラインG1ゲーム発行決定書(①(b))及びオンラインG2、G3、G4ゲームサービス発行通知確認書(②(b))の何れにも適用される発給条件の1つとして、ゲームがカジノ施設での賞品付きゲーム、トランプカード画像を使用するゲームを模倣するものではないことが追加されました(本件議定第43条第1項第b号、第52条第1項)。
また、オンラインゲームサービスの運営過程についても条件が追加され、例えば、オンラインゲームサービスを提供する企業は、法律に規定されている仮想アイテム、報酬ポイント及び仮想単位に関する規制(仮想アイテム、報酬ポイント及び仮想単位は、オンラインゲームの範囲内で、企業が報告した目的にのみ使用し、プレイヤー間で売買することはできないこと等)を遵守すること、ゲームカードの発行及び管理に関する規制(発行及び停止を国家機関に報告すること等)を遵守すること、児童保護に関する法律に従いオンラインで児童を保護するための対策を展開すること等が条件として追加されています(本件議定第54条第5項、13項、15項、第56条、第57条、第58条等)。
上記の点に加えて、本件議定には、移動体通信ネットワーク上での情報コンテンツサービスの提供(本件議定第IV章の第70条から第78条まで)、情報の監視、インターネット上の違法情報の防止及び削除(本件議定第V章第79条から第81条まで)に関する新しい規定も含まれています。
本件議定は、旧議定に比してインターネットサービス及びオンライン情報の管理、提供、利用に関し厳格化した内容を規定していること、また、本件議定が施行されてから間もなく運用が暫く流動的である可能性があることを踏まえますと、皆様がベトナムに進出し事業運営するにあたっては、今後の動向には引き続き中止するのが望ましいと思われます。
MLRコンスタンティン社(https://mlr.ltd/)
ここ数十年、ベトナムは汚職、マネー・ロンダリング、不正会計の撲滅に積極的に取り組んできました。これら3つの弊害は、投資家の信頼、金融の安定性、パブリック・ガバナンスに大きな影響を与えます。こうした課題に対処するため、ベトナム政府は大規模な法改正を行い、規制の枠組みを強化し、透明性を高め、健全かつ公平な経済環境を保証するために厳格な管理を課しています。
ベトナムは長い時間をかけて、これらの分野で重要な法的フレームワークを提供してきました。また、ベトナムにおける汚職、マネー・ロンダリング、不正会計との闘いにも取り組んでいます。
継続的な法制度の進化‐汚職との闘いはベトナム共産党の絶対的な優先課題であり、1986年に開始されたドイモイ(改革)プログラムに組み込まれています。汚職防止の法的フレームワークの進化は、いくつかの法令と決議によって加速しています。2005年、ベトナムは最初の汚職防止法を採択し、政治家の資産と所得を管理することを義務づけました。2006年、ベトナム共産党は汚職撲滅活動を強化する決議を採択しました。2018年には汚職防止法の改正により制裁が強化され、2022年には透明性と防止の強化を目的とする決議第27号が採択されました。
厳格な施行のための具体的行動‐2018年法の施行に伴い、公務員の資産と所得に対する管理の強化、汚職に由来する資産の回収、行政管理と金融取引における新技術の統合など、いくつかの措置が実施されています。
展望とコミットメント‐2030年までの国家汚職防止戦略では、国会は犯罪の防止、摘発、制裁を強化することを任務としています。ベトナム共産党の目標は、党内運営を浄化し、社会正義を確保し、経済発展を加速させることです。
金融犯罪に対する法規制の強化‐ベトナムは、2022年11月15日に採択された新しいマネー・ロンダリング防止法(Anti-Money Laundering Law:AML2022)により、法的枠組みの大幅な改革に着手しました。この法律は、2012年の法律に代わるもので、ベトナムをマネー・ロンダリング等に関する国際機関であるFinancial Action Task Force:FATFの40の勧告に合わせることを目的としています。しかしながら、2019年から2021年にかけてFATFに関する地域組織であるアジア・太平洋グループ(Asia/Pacific Group :APG)が実施した相互評価では、根強いギャップが明らかになりました。ベトナムはFATFの40の勧告のうち27項目しか遵守しておらず、2023年6月に「グレーリスト」に掲載されることになりました。
課題とFATF勧告‐2024年10月、FATFは進展が限定であると指摘し、10の主要な勧告を発表しました。その中で、リスクについての理解の改善と国際協力の強化、金融機関に対する効果的な監督の実施、仮想資産と暗号通貨の規制、受益者識別手続の確立、当局間協力の強化と訴追の増加が必要とされました。「グレーリスト」に掲載されると、外国直接投資(FDI)の減少、資金調達コストの増加、国の名声の低下につながる可能性があります。
ベトナムが実施した措置‐こうした課題に直面し、ベトナムは改革を加速させてきました。2024年2月、Decision No.194/QD-TTgにおいて、マネー・
ロンダリング犯罪を防止する国の能力を示すために、17の行動を含む国家行動計画を策定しました。さらに、ベトナム国家銀行(State Bank of Vietnam:SBV)は、必要な改革の実施を確保するためにAPGと協力しています。
タインアン・ハノイ事件‐2024年8月、ベトナム当局はタインアン・ハノイ社の社長であるグエン・ダン・トゥイエット氏が組織した巧妙な脱税ネットワークを摘発しました。彼は36名の共犯者と共謀し、虚偽の請求書作成と架空取引システムを構築し、国に巨額の損失をもたらしたとされています。
不正会計の経済的影響‐不正会計は、税収の減少による国の財政的損失、関連企業の名声の低下、責任者の法的リスクなど、深刻な結果をもたらす可能性があります。
これらのリスクを軽減するための対策‐不正会計を防止するために企業は、金融取引を監視するための強力な内部統制、定期的な内部および外部監査、コンプライアンス文化を強化するための社員教育、疑わしい取引を検出するための高度なテクノロジー利用などの厳格なメカニズムを導入する必要があります。
ベトナムは、汚職、マネー・ロンダリング、不正会計と闘うための法的枠組みを強化する具体的対策を講じています。しかし、マネー・ロンダリング防止改革の実施を加速させ、金融機関の監督を改善する必要があるなど、大きな課題が残されています。国際基準の遵守と透明で安全な経済環境の確立は、外国人投資家を惹きつけ、財政を安定させ、持続可能な成長を確保するために極めて重要となります。このようにベトナムは、より透明で効果的なガバナンスを確立する努力を続けることで、健全なガバナンスと金融コンプライアンスに関する国際基準に徐々に整合しています。
(※)レミ・グエン博士は、リスク・アドバイザリー、コンプライアンス、ビジネス・インテリジェンス、コーポレート・アフェアーズ、会計、税務、監査を専門とする企業で、ベトナムのハノイとホーチミンに拠点を置くMLRコンスタンティン社のパートナーの一人です。また、レミ・グエン博士は、在ベトナムフランス商工会議所の副会長の一人であり、IRASEC(CNRS-MEAE)の準研究員でもあります。
東京共同会計事務所 事業開発企画室 グローバルタックスチーム ベトナムデスク
ヴ ティ フオン リン(ベトナム国税理士)
TEL:81-3-5219-8890
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MAIL:vuthiphuong-linh@tkao.com
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