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不動産マーケットにおいては、金融機関、不動産会社、資産運用会社、信託銀行等が証券化手法を用いて、不動産開発や不動産運用を行い、投資家への分配を行う仕組みが形成されています。
本記事では、不動産証券化の代表的な手法であるREIT(不動産投資信託)について紹介します。
REIT(リート)とは、Real Estate Investment Trust (不動産投資信託)の略で、証券を発行して資金を集め、その資金により不動産を購入・運用し、得られた賃貸収入や売却益を証券の購入に応じて投資家に分配する投資商品のことをいい、法律上は投資信託の一種です。
日本ではREITの頭にJAPANのJをつけて「J-REIT」と呼ばれます。
2001年9月に2投資法人が上場して以降、2024年11月末時点で57銘柄が上場しており(J-REIT)、非上場のREITである私募REITも2024年6月時点で58投資法人が運用されています。
出典:一般社団法人不動産証券化協会「ARES マンスリー レポート(2024年 12 月)」
出典:一般社団法人不動産証券化協会「私募リート・クォータリー No.35(2024年6月末基準)」
不動産証券化を含む資産金融は、資産の流動性向上による市場活性化に繋がり、古くは不良債権処理、近年では多様化した資金調達方法の一つとして日本経済の発展に寄与してきました。
「不動産証券化の実態調査」(国土交通省)によると、2023年末時点での不動産証券化対象となった不動産等の資産総額は約59.8兆円となり、うちREIT等(REIT及び不動産特定共同事業)の保有額は約30兆円に達しています。
出典:国土交通省「不動産証券化の実態調査」
J-REITには、証券取引所に上場しているものがおよそ60銘柄あり、透明性も高く個人が株式と同様に取引できるため、日本政府が掲げるスローガンである「貯蓄から投資へ」を推進している一つの要因だといえます。一方、非上場である私募REITも近年増加傾向にあり、いわゆる土地持ち企業が取り組む例も増えています。
このようにREITが注目される背景の一つとして、コーポレートガバナンスの観点から株主への説明責任が高まっており、企業不動産を企業価値向上に繋げる観点で経営戦略を見直すCRE戦略(※)の視点から、不動産の有効活用が求められていることがあります。
※出典:合理的なCRE戦略の推進に関する研究会「CRE戦略実践のためのガイドライン(2010年改訂版)」
REITの種類は投資資産別や地域別、スポンサー別に分かれます。
REITの対象となる不動産は、オフィスビルや賃貸住宅、商業施設等様々であり、収益力は投資する不動産によってそれぞれ異なります。また、スポンサー企業の資金調達力や資産運用会社の投資能力は、組成・運用するREITの種類やパフォーマンスに大きく影響します。
では、どのようなREITが存在するのか簡単に紹介します。
REITは銘柄ごとに対象となる不動産の用途が異なり、投資スタイルも様々です。
投資対象となる不動産としては、オフィスビルや賃貸住宅、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設、最近はデータセンターや産業用不動産等、様々な種類があります。
また、投資対象となる不動産について、単一の用途のみにしている特化型や、2種類の用途にしている複合型、複数の用途にしている総合型があります。例えば、一つのREITの保有する不動産の中に、オフィスや賃貸住宅、商業施設が入っているものは総合型になります。
不動産の投資対象地域もREITの銘柄によって異なります。
投資家への分配の源泉となる賃貸収入は、投資対象物件の所在地域により影響を受けます。
投資対象地域の選定について、扱う投資対象不動産の用途の特性を踏まえて投資対象地域を選定する場合と、投資対象地域を選定してから投資対象不動産の用途を選定する場合があります。例としては、オフィスビルを扱うため、オフィスビル需要の高い地域を選定する等が挙げられます。
投資対象地域としては都心や首都圏、三大都市圏、全国等があり、投資のタイプとしては地域を分散させるのか、特定の地域に特化するのか等の選択肢があります。
REITの例として、関西圏の不動産に50%以上の投資をしている「阪急阪神リート」、福岡・九州地域を主要投資対象とする地域特化型の「福岡リート」、東海道地域を中心に静岡県を核とし愛知県・重県の3県への投資比率を60%以上とする「東海道リート」、地方に70%以上の投資をして全国に投資を分散させる「マリモ地方創生リート」等があります。
出典:阪急阪神リート投資法人「ポートフォリオ構築方針」
出典:東海道リート投資法人「「産業地域」への重点投資」
出典:マリモ地方創生リート投資法人「ポートフォリオ構築方針」
REITのスポンサーの例としては、不動産会社やデベロッパー、商社、鉄道会社、住宅メーカー、金融系企業、外資系企業等が挙げられます。
スポンサーは、投資対象となる不動産取得のためのパイプラインや、不動産の賃貸支援、マネジメントをサポートします。また、スポンサーは投資にあたっての資金調達力にも影響し、REITのパフォーマンスに重要な役割を果たします。
例えば不動産会社がスポンサーであれば、中古物件再生に強い企業や、賃貸物件の建設・仲介・管理を主体としている企業等、スポンサーである不動産会社の強みがそのままREITの特徴になります。
REIT(不動産投資法人)特有の会計・税務の論点を紹介します。
投資法人は、「投資信託及び投資法人に関する法律」(投信法)に基づき設立されており、その会計は「投資法人の計算に関する規則」に依拠します。加えて、上場しているJ-REITについては、有価証券報告書の提出義務があり、「金融商品取引法」(金商法)に基づく開示が行われます。
これらの開示は、公認会計士または監査法人による会計監査が義務付けられており、透明性が求められます。
投資法人は、租税特別措置法第67条の15(投資法人に係る課税の特例)により、会計上の税引前当期純利益に一定の調整を加えた金額の90%超の配当を行った場合、その配当額を損金算入することができるため、事実上、法人税がほぼ免除されます。
このため、REITでは一般的には利益の大部分を配当しており、かつ、通常の株式会社では税引後当期純利益から配当されるのに対し、REITでは法人税が引かれる前の当期純利益から配当されるため、高い配当性向が維持され投資対象としての魅力となっています。
REITは会計監査人による監査を受ける必要があり、その会計は投資法人の計算に関する規則に依拠する必要があるため、不動産ファンドに強い会計の専門家が必要になります。
また、投資家説明書類にかかわる税務記載箇所の作成や、税務意見書の作成、租税特別措置法第67条の15の要件を満たしているかの確認等、不動産ファンドに関する税務に精通した専門家の助けも必要となります。
その他、通常の法人では会計上、欠損が累積している場合には、欠損が生じている期間は利益の配当を行うことができません。
しかし、REITにおいて継続的に無配当の場合、投資家離れを引き起こすことから、損失の全部または一部を出資総額から控除する、欠損補填の無償減資を行えます。これにより欠損を解消し、利益配当ができるようになります。
多額の売却損や減損損失が生じている場合に配当を継続する手立てに関して、会計や税務の専門家へ意見を聞くのが有効となります。
投資法人はその資産運用会社とともに、金融庁に登録されます。
投資家が積極的な資産運用を行うためには、金融商品市場が公正かつ効率的なものであることが大前提であり、投資法人も金融市場の仲介者としての重要な役割を負うこととなります。
そのため、金融庁は金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針に則り、証券取引等監視委員会等と連携しながら、実態把握や対話等によるモニタリングを継続的に行っており、必要に応じて監督上の措置を発動する場合があります。
東京共同会計事務所では、REIT設立段階からのコンサルティングや、記帳・申告、資産判定、開示資料のドラフト作成等幅広く資産運用会社のサポートを実施しております。また、会計税務意見書の作成や特定資産の価格等の調査業務、有価証券届出書発行時のAUP業務、グループ内の司法書士法人と連携した不動産取得時等の登記手続サービス等も実施しており、ワンストップでクライアント企業のニーズへお応えできる体制を整備しています。
REIT設立時に必要な会計税務論点のアドバイスに留まらず、勘定科目の設定や固定資産台帳のセットアップ等、期中管理(記帳・決算・申告)等を見越したオペレーション構築を、資産運用会社の体制に沿って柔軟にサポートしております。
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REITは近年注目される投資の一つであり、その種類は様々です。
税務との関係から、高い配当性向が維持される点で魅力のある投資対象といえます。
東京共同会計事務所には、REITの執行役員、監督役員を務める有識者も所属しており、会計・税務に留まらず、REITの運営における知見やノウハウを有しております。
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