【ベトナム】
ビジネス・経済・会計・税務・金融・労務ニュース

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【ベトナム】<br>ビジネス・経済・会計・税務・金融・労務ニュース

本稿では、RSM Vietnamからの寄稿により、初めてベトナム進出を検討している日本企業および既にベトナム進出している日本企業に向けて、ベトナムのビジネス・経済・会計・税務・金融・労務に役立つ情報をお届けします。

日本の投資家にとって、市場や税務に関する規制を理解することは、コンプライアンスを確保し、ベトナムでの投資リターンを最適化するために不可欠です。ここでは、ベトナムへの投資を検討している日本の投資家のために、ベトナムの概要と税務上の主な留意点について説明します。

【寄稿】RSM Vietnam

ベトナムへの投資の魅力

 ベトナムは、以下のような理由から、日本の投資家にとってますます魅力的な投資先となっています。

戦略的立地性

 ベトナムは東南アジアにおいて戦略的に優位な場所にあり、中国、インドおよびASEAN諸国などの主要マーケットにも近いことから、地域内貿易および世界貿易の魅力的なハブとなりつつあります。また、ベトナムは、サプライチェーンの多様性および地政学的リスクの緩和に寄与しており、さまざまな国際貿易ルートの重要な一部を担っています。

有利な貿易協定

 ベトナムは、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)およびEUとの自由貿易協定(FTA)など、多くの多国間貿易協定に参加しています。これらの協定は、多くの市場に特恵的アクセスを与えるため、日本企業は関税や障壁の軽減の恩恵を受けて、ベトナムで製造される製品の競争力を高めることができます。

政治経済の安定性

 ベトナムは政治的に安定しており、強力な中央集権的政府が外国直接投資(FDIを誘致するための企業優遇政策を実施しています。税制優遇措置、規制緩和、投資優遇政策は、特にハイテク、再生可能エネルギーおよびインフラ分野において、日本の投資家を含む外国の投資家がこれらの優遇措置の恩恵を受けることができるように、ベトナム政府が特別に整備しているものです。

労働コストの競争力

 労働コストが安いベトナムは、繊維、電子機器および製造業などの労働集約型産業にとって理想的な投資先となっています。また、ベトナムは35歳以下の人口比率が高く、若年層のダイナミックな労働力を有しているため、技能労働者と半技能労働者の両方を必要とする産業に対して、継続的に労働力を供給することが可能とされています。

消費市場とデジタル経済の活況による急速な経済成長

 ベトナム経済は成長を続けており、過去10年間のGDP成長率は年平均6~7%となっています。このため、アジアで最も急速に経済成長している国の一つであり、消費財、サービスおよびインフラに対する強い需要が生まれています。1億人を超える人口を有するベトナムは、電子機器、自動車およびハイテク財などの日本製品の消費市場としても成長しています。ベトナムの中間層は急速に拡大しており、特に日本の強みである電子機器、家電製品および自動車などの高品質消費財に対する強い需要が生まれています。ベトナムは都市化が進み、可処分所得が増加しているため、日本の消費財とサービスにとって非常に収益性の高いマーケットとなっているといえます。

 また、ベトナムのデジタル経済は急速に拡大しており、IT、通信、フィンテック、eコマースなどの分野においても日本企業にビジネスチャンスをもたらしています。これらの分野は、ハイテクに精通した若年人口とインターネットの普及に支えられています。経済の発展により、道路、橋、エネルギーおよび公共交通機関などのインフラ整備の需要も高まっており、これらの分野の専門性を有する日本企業にも巨大なビジネスチャンスをもたらすでしょう。

持続可能性とグリーン・イニシアティブ

 日本とベトナムは、特に再生可能エネルギーおよび環境技術における持続可能性に関する取組みで連携が可能と考えられます。クリーンエネルギー、廃棄物処理、持続可能な都市開発における日本の専門性は、東南アジアにおける再生可能エネルギーのリーダーになるというベトナムの目標を支援することができます。また、ベトナム政府の再生可能エネルギーに向けた取組みは、太陽光、風力およびスマートエネルギーシステムにおける日本の先進技術とも親和性が高いです。

ベトナムに進出する日本企業に適用される税制優遇措置

 ベトナムに進出する日本企業は、外国からの投資を奨励することを目的としたさまざまな税制優遇措置の恩恵を受けることができます。これらの優遇措置は、全体的な税負担を軽減し、重要分野や重要地域におけるビジネスの成長を支援することを目的としています。主な税制優遇措置をご紹介します。

ベトナムの投資法令で定められる国内で活動する企業に適用される3つの優遇措置

法人所得税
(CIT)
一定の期間またはプロジェクト全実施期間における標準税率20%より低い法人所得税(CIT)率の適用
土地賃料
および租税
土地賃料および賦課金の免除または軽減
輸入関税 / 輸入付加価値税(VAT)プロジェクトに使用される原材料、供給品および部品が固定資産として輸入される場合の物品に対する輸入関税または輸入付加価値税(VAT)の免除または軽減

法人所得税(CIT)優遇措置についての留意点: 法人所得税(CIT)優遇措置は、国の開発戦略に沿った分野または地域に対する投資を促進するために外国の投資家およびベトナム国内の投資家の両方に付与されます。ベトナムの法人所得税(CIT)優遇措置には、優遇税率(軽減税率)および減免税(一定期間またはプロジェクト存続期間中の免税または減税)の2つがあります。

優先的優遇分野

ベトナムにおける投資優遇措置の対象となる優先事業分野とプロジェクト
分類ハイテク大規模社会的重要性
プロジェクト下記分野における投資プロジェクト
・情報技術
・新素材技術
・ハイテク補助製品
・バイオテクノロジー
・自動化技術
・ソフトウェア生産
・科学的研究開発
 6兆ドン以上の投資資本の製造プロジェクトで操業開始後4年目までに下記いずれかを満たすもの

 a) 3000人以上の労働者雇用
 b) 10兆ドンの年間売上
 
12兆ドン以上の投資資本の製造プロジェクトで特定の技術を使用するもの
下記分野における投資プロジェクト
・ヘルスケア
・教育
・文化
・職業訓練
・スポーツ
・環境
優遇措置・CIT10%(15年間)*
・CIT免除(4年間)**
・CIT50%軽減(9年間)
・CIT10%(15年間)*
・CIT免除(4年間)**
・CIT50%軽減(9年間)
・CIT10%(全期間)
・CIT免除(4年間)**
・CIT50%軽減(9年間)
* 売上が生じた年から
** 課税所得が生じた年(ただし売上が生じた年から3年目までに課税所得が生じない場合は4年目)から
留意点:経済特区内のプロジェクトは取扱いが異なる場合があります。

税務上の主な留意点と日本企業に影響する最新の税制改正

 ベトナムに進出する日本企業は以下のようなさまざまな税務上の主な留意点を遵守する必要があります。

個人所得税(PIT)
雇用主は従業員に代わりPITを源泉徴収し
納付する義務があります。
付加価値税(VAT)
VATの標準税率は10%です。企業はVAT登録を行い、定期的にVAT申告(四半期または月毎)を
行わなければなりません。
法人所得税(CIT)
CITの標準税率は20%です。企業は毎年確定申告する必要があり、CITに関する法令を遵守しない場合は罰金が課されることがあります。
外国契約者税(FCT)
ベトナムにおいて法人格を有さずに商品やサービスを提供する外国企業に適用されます。

 ベトナムで事業を行う外国企業に影響のある、いくつかの重要な2024年度の税制改正があります。

法人税改正

 ベトナムはグローバルミニマム税(GMT)を導入しますが、最終親会社が計算するグループの年間売上高が7億5000万ユーロ以上の多国籍企業(MNE)に影響が生じます。これらの企業は、適格国内最低課税(QDMTT)と所得合算ルール(IIR)を通じて、最低税率15%の対象となります。これは、ベトナムがこれまで外国の投資家を誘致するために提供してきた法人所得税優遇措置の有効性に影響を与える可能性があります。GMTを実施するための更なるガイダンスがまもなく発表される予定です。

付加価値税(VAT)率の引下げ

 多くの商品とサービスの標準付加価値税(VAT)率は、景気回復を後押しするために8%(標準税率は10%)の適用が認められています。

納税期限の延長

 ベトナム政府は、企業を支援するために納税期限を延長しています。例えば、2024年第2四半期の法人所得税は3ヶ月延長され、特定の企業は、2024年10月31日までの支払いが認められています。同様に、国から土地を賃借している企業は、多くの場合、地代の支払いを2ヶ月延長することが認められています。

本稿のお問合せ先

株式会社東京共同ホールディングス 事業開発企画室
TEL:03-5220-6201
Email:shozo-suehiro@tkao.com
URL:https://international-tax.jp/wp/ 国際税務相談デスク

お問合せ・無料相談のお申込み:https://international-tax.jp/wp/contact/

本稿はRSM Vietnamから寄稿された原稿に依拠して作成しております。本稿内容は監修者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではございません。本稿に記載されている情報は一般的なものであり、必ずしも貴社の状況に対応するものではございません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがございます。本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではございません。個別事案の検討・推進に際して、貴社において何かしらの決定をする場合は、貴社の顧問税理士等、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。

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