【台湾】
ビジネス・経済・会計・税務・金融・労務ニュース

  • 国際税務・国際ビジネス
【台湾】<br>ビジネス・経済・会計・税務・金融・労務ニュース

 本稿では、RSM Taiwan(廣信益群聯合會計師事務所)からの寄稿により、初めて台湾進出を検討している日本企業および既に台湾進出している日本企業に向けて、台湾のビジネス・経済・会計・税務・金融・労務などに関するさまざまな情報をお届けします。

【寄稿】RSM Taiwan(廣信益群聯合會計師事務所)

台湾経済の概況

製造業

 輸出主導型製造業の業績は産業ごとに異なります。ハイエンド・チップやAIサーバーの需要が高まる一方で、石油化学や半導体産業は困難に直面しています。世界経済の不確実性と主要貿易相手国の景気変動は、台湾の輸出主導型製造業の業績にさらに影響を及ぼす可能性があります。

サービスおよび建設業

 台湾の内需は安定しており、金融業や運輸・倉庫業は株式市場の上昇や輸出量の増加により活況を呈しています。建設業界は国内経済の回復の恩恵を受けており、全体的な見通しは楽観的です。

 これらの分野における台湾の発展は、米国の金利調整や中国の経済政策といった世界経済の変化にも影響されます。

台湾のGDPに占める製造業、建設業およびサービス業の割合(過去5年間)
(※出典:台湾行政院主計總處 2024年5月30日)

電力供給リスク

 台湾行政院主計總處の統計によると、2023年の台湾北部の電力消費量は930億kWhであるのに対し、発電量は750億kWhであり、需給ギャップは約200億kWhとなります。南部から北部、中央部から北部への送電により緩和したものの、台湾は依然として送電による電力喪失の問題に直面しています。

台湾の地域別電力消費量と発電量のギャップ
(※出典:台灣電力公司 2024年8月30日)

 台湾政府は、現在の電力不足と将来の電力需要に対応するために、グリーンエネルギー産業の促進やエネルギー効率の改善に加え、原子力エネルギーの開発も検討しており、北部を中心に積極的に電力開発を行い、送電網を整備する計画です。

マクロ経済の見通し

 財団法人台湾経済研究院は、2024年7月25日に最新の経済見通しを更新しました。2024年の台湾の経済成長率は3.85%で、前回の見通しから0.56%の大幅上方修正となりました。この修正は主に、世界的なAIブームの恩恵を受けて、台湾国内の半導体企業が、先端プロセスやハイエンド・パッケージングおよびテスト能力の拡大に伴う工場拡張に積極的であり、その結果、民間投資が予想を上回り、国内外からの需要に支えられる安定的な経済成長モデルを維持できていることによるものです。また、台湾行政院主計總處の発表によると、2024年上半期の失業率は平均3.36%で、前年同期比で0.15%減少し、労働市場が安定していることを示しています。台湾の労働市場が引き続き安定しかつ賃金が上昇し、堅調な株式市場による富の増幅効果が影響するとすれば、台湾経済は引き続き成長すると考えられるでしょう。

過去5年間の台湾の経済成長率の推移
(※出典:台湾行政院主計總處)

労働法制

 台湾が超高齢社会に移行する中、台湾政府は2023年に台湾労働基準法第54条を改正し、65歳定年退職制度を廃止しました。この改正により、雇用者と労働者は柔軟に退職年齢を交渉することが可能になり、高齢者の労働力が有効活用されることが期待されています。

希望退職の条件に変更なし

 15年以上勤続しかつ55歳以上の者、25年以上勤続する者、または10年以上勤続しかつ60歳に達する者など、希望退職の条件に変更はありません。労働者は、退職の1ヶ月前までに雇用者に事前通知することにより、上記条件に基づいて希望退職を申請することができます。

交渉不成立の場合の解決策

 雇用者と労働者の双方が、交渉による退職年齢について合意に達しない場合は、従来の65歳定年退職制度に従って処理されることになります。

コンプライアンス違反に対する罰則

 台湾中高齡及高齡者就業促進法第12条では、雇用者は退職を延期した労働者に対する差別(賃金、福利厚生等を含むがこれに限定されない)を禁じています。これに従わない場合、30万台湾ドル以上150万台湾ドル以下の罰金が科せられます。

政策的意義

 台湾労働基準法の改正は、台湾の労働法における大きな変革です。65歳以上の労働者の退職年齢に関する協議メカニズムを確立することにより、台湾政府は高齢者の労働寿命を延ばし、労働者と企業の協力を促進することを望んでいます。この改正は、高齢者の経験を十分に活用するのに役立つだけでなく、超高齢社会に移行する中での社会発展のためのニーズに沿った、労働力供給の柔軟性と安定性を提供することになるといえるでしょう。

税制情報

関連者間取引と三層構造の移転価格文書

 2023年度の営利事業所得税の申告は2024年5月末で終了し、一定の基準を満たす企業は、台湾の法令に基づいて関連者間取引を報告し、三層構造の移転価格文書を作成することが求められます。

 企業は、異なる種類の関連者間取引について、個々の取引ごとに分析し、法令等に従い、適切なテストを実施しなければなりません。また、企業が複数の関連者間取引を行う場合、または関連者間取引と非関連者間取引の両方を行う場合、評価する必要のある当事者間取引に関連する財務情報を分離し、法令に従い、個別にテストを実施する必要があります。

 企業経営者は、グループ内の全企業の損益を、年度内に定期的に確認し、異常が発見された場合、早期に価格政策を通じて調整し、移転価格税制上のリスクを軽減することができます。三層構造の書類を作成する場合は、財務諸表、税務申告書、取引契約書等と整合しているかということに注意します。取引に不確実性があり、相手国が台湾と租税協定を締結している場合、企業は、二重課税のリスクを回避するために、台湾国税局に二国間移転価格事前確認(APA)の申請を検討することもできます。

 また、多国籍企業は、世界的な租税回避防止の動きに直面する中、タックスヘイブンへの関心は徐々になくなりつつあり、税制優遇と税務リスクのバランスを取るために適切な租税の考え方を採用することを検討すべき状況に変化しています。

外国企業に対する支払いに20%の所得税を源泉徴収しなければならないか

 国際貿易の増加に伴い、外国企業から商品、サービス、ソフトウェア等を購入することは企業にとって特別なことではなくなっています。その支払いの際、外国企業が20%の所得税を源泉徴収されることを受け入れることができず、台湾企業にこの部分の税負担のグロスアップを求めることが多く、その結果、台湾企業のコストが大幅に増加しています。所得税の源泉徴収の回避や軽減は可能なのでしょうか?

 台湾の所得税法によれば、本社が台湾国内にない営利企業に台湾源泉所得がある場合、その台湾源泉所得に対して課される所得税は、台湾において納付しなければなりません。従って、外国企業が得た所得が「台湾源泉所得」と判断されるかどうかが、所得税の源泉徴収を考える上での基準となります。残念ながら、現行の法令では、外国企業が台湾企業に提供するサービス等に対する報酬やロイヤリティのほとんどは、外国企業の台湾源泉所得と判断される可能性が高くなっています。

 納税が避けられない場合、20%を差し引く必要があるのか、というと必ずしもそうではありません。台湾において固定的な事業所を有しない、または、代理人を通じて事業を行っていない外国企業に対して支払われるサービス収入、ロイヤルティその他の収入には、通常、現行の法令に従って20%の所得税が課されます。しかし、その外国企業が提供するサービスがコンサルティング、教育訓練などの技術サービスである場合、または、その外国企業が台湾と租税条約を締結している国の企業である場合は、減税措置を受けることができます。

 ただし、租税条約の限度税率が適用されるロイヤルティ、配当および利子については事前申請する必要はありませんが、その他の所得について支払時に所得税の減免を受けるためには、事前承認書を申請する必要があります。

 適用される減税・免税の種類は、締結する契約の内容と密接に関係するため、契約を締結する前に専門税務アドバイザーに相談し、税務コストやリスクを効率的に把握することが望ましいと考えます。

企業会計準則(EAS

企業会計準則第12号「所得税」

国際会計基準(IAS)第12号「法人所得税」に従い、台湾企業会計準則(EAS)第12号の所得税の範囲が改訂され、繰延税金負債の認識の免除の範囲の制限および繰延税金負債の認識の免除が追加されます。

国際財務報告基準(IFRS

議決権付優先株式の投資損益の認識

 IAS第28号「関連会社及び共同支配企業への投資」の第6項によれば、ある企業が投資先の議決権の20%以上を直接または間接的に(子会社などを通じて)保有している場合、そうでないことが明確に証明されない限り、当該企業は重要な影響力を有していると推定されます。反対に、当該企業が議決権の20%未満しか保有していない場合、そのような影響力が明確に証明されない限り、当該企業は重要な影響力を有していないと推定されます。さらに、他の投資家が大部分または過半数を所有していたとしても、当該企業が重要な影響力を有していることを必ずしも排除するものではありません。

 したがって、当該企業が投資先企業の普通株式の議決権と実質的に同様の議決権付優先株式の20%以上を直接的または間接的に保有している場合、重要な影響力を有していないことを示す他の証拠がない限り、重要な影響力を有していると推定されます。

 優先株式への投資が重要な影響力を有し、かつ、その議決権が普通株式の議決権と実質的に類似している場合、その投資損益は持分法に従い、優先株式の損益分配に応じて認識されます。ただし、投資損益および投資持分の評価にあたっては、投資先企業の定款および優先株式の発行条件を考慮する必要があります。

会社法、商業登記および投資規制

 2024年4月以降、台北市中山区において、70店以上の飲食店や小売店が「居住区」において用途地域規制に違反して営業していることが報告されました。台北市政府都市発展局は、2ヶ月以内に違法営業を改善することを求め、その結果、同地区の多くの店舗が閉店を余儀なくされました。これに対して、同地区の人々は商店街を守るための要望書を提出しましたが、路地裏文化の維持と居住の安全性を高める都市の再開発のせめぎ合いとなっています。こうしたことから、台北市内で飲食店や小売店を営む上では、立地の合法性が最も重要な課題といえます。

 「台北市土地使用分区管制自治条例」及び「台北市土地使用分区附条件允許使用標準」の規定により、住宅地を飲食や小売などの商業用途で使用する場合、そのほとんどが8メートル以上の道路に接する必要があり、かつ、階層や面積などの使用許可条件を満たさなければなりません。

 もし、その場所で開業が可能であるのかを知りたい場合は、会計事務所等に相談の上、開業前に台北市商業処に事前審査を申請することができます。

本稿のお問合せ先

株式会社東京共同ホールディングス 事業開発企画室
TEL:03-5220-6201
Email:shozo-suehiro@tkao.com
URL:https://international-tax.jp/wp/ 国際税務相談デスク
お問合せ・無料相談のお申込み:https://international-tax.jp/wp/contact/

本稿はRSM Taiwan(廣信益群聯合會計師事務所)から寄稿された原稿に依拠して作成しております。本稿内容は監修者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではございません。本稿に記載されている情報は一般的なものであり、必ずしも貴社の状況に対応するものではございません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがございます。本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではございません。個別事案の検討・推進に際して、貴社において何かしらの決定をする場合は、貴社の顧問税理士等、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。

©2024東京共同会計事務所 無断複製・転載を禁じます。

関連コンテンツ

ページトップに戻る