2023年12月26日(2024年2月2日一部修正)より、EUの炭素国境調整措置(Carbon Border Adjustment Mechanism。通称CBAM)の報告制度が開始されました。EU域外から肥料、セメント、鉄・鉄鋼、アルミなどのCBAM対象産品を輸入する輸入者は、輸入産品の製造時に排出される二酸化炭素(CO2)の排出量を四半期ごとにとりまとめて、EUの当局に報告することとされています。なお、CBAMの本格導入は、2026年とされていて、それまでの間、この四半期報告が継続することとされています。
本稿ではデータ提供の対象者や提出様式、データ作成の手順を解説しています。
まず、データ提供が必要な生産者であるかを確認します。
EUにCBAM対象産品を製造・輸出している日本の生産者は、EUの輸入者から、EU当局への報告に必要なCBAM対象産品の二酸化炭素(CO2)排出量などに関するデータの提供を求められることとなります。
ここで、データ提供が必要な生産者とは、以下の2つの確認事項の両方に該当する生産者をいいます。
確認事項1:CBAM対象産品を製造していますか?
確認事項2:製造した産品がEUに輸出されていますか?
EUの輸入者から要請を受けた日本の生産者は、概ね以下のステップで必要なデータを提供する準備を行い、欧州委員会が公表しているExcel表(注)によりデータをEUの輸入者に提供する必要があります。
なお、報告期間と報告期限は以下のとおりです。従って、日本の生産者はこの報告期限に間に合うように、EUの輸入者にデータを提供することが求められます。
報告期間 | 報告期限 |
2023年10月~12月 | 2024年1月31日 |
2024年1月~3月 | 2024年4月30日 |
2024年4月~6月 | 2024年7月31日 |
2024年7月~9月 | 2024年10月31日 |
2024年10月~12月 | 2025年1月31日 |
2025年1月~3月 | 2025年4月30日 |
2025年4月~6月 | 2025年7月31日 |
2025年7月~9月 | 2025年10月31日 |
2025年10月~12月 | 2026年1月31日 |
(注)欧州委員会が公表しているデータ提供のためのExcel表(CBAM communication template for installations – Final Draft 07.11.2023 English)(2023年12月1日現在)
次に、以下のステップで二酸化炭素(CO2)排出量データを作成します。
【ステップ1:製造施設の対象範囲を決める】
【ステップ2:報告対象期間を決める】
【ステップ3:モニタリングが必要なすべての数値を特定する】
<直接排出について(Scope1)>
<間接排出について (Scope2)>
<前駆体(precursor)について (Scope3)>
<その他>
【ステップ4:継続して数値をモニタリングする手順を決める】
次に、原産国におけるカーボンプライスとしての支払額を確認します。
最後に、以上の報告に必要な数値のモニタリング手順等については、手順書としてまとめておき、その後も定期的に見直しを行うこととされています。
上述は全てのCBAM対象産品カテゴリーに共通する事項の概略をまとめたものとなっています。欧州委員会は、CBAM報告に関して、CBAM対象産品カテゴリーごとの様々な要件を公表しています。
従って、実際にデータ提供等を行う際には、欧州委員会の公表資料を確認する必要があります。
(出典)欧州委員会「Carbon Border Adjustment Mechanism」
なお、本稿の内容は執筆者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではありません。記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがあります。
本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではありません。個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。
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